ポツリポツリと、激しいとは言い難いような雨の中、腕時計を睨んでいた女が呟いた。
「……遅い」
あたしは風を肩で斬るかのように歩いていた。
不機嫌オーラ?? 出しまくってますが何か。
スナックの前で一度足を止め、その脇の階段から更に上へと上がっていく。
横開きの戸を足で荒々しく開けて、あたしは中にいる者に向かってニコリと笑いかけた。
「おはよう、銀さん。――ところで、今何時か教えてもらえる?? 腕時計忘れちゃってさぁ」
嘘である。
その証拠に着物の袖口からは銀色の物体が覗いている。
「さ、さぁー。今俺ンちの時計ぶっ壊れてっからさぁ」
あたしから目を逸らす銀さんの膝の上にはジャンプがあった。
既に靴は履いていたから、きっと出かける前に一話だけ、とかなんとか言って読みだしたのだろう。
そしてそのまま時間を忘れて読み耽ってしまったのだ。
……あたしとの約束があったってのに??
あたしは笑顔のまま、右手に持っていた傘をぐっと握り締めた。
「神楽ちゃーん?? あるいは新八くーん?? 今何時か分かりますかー」
「今ですかー?? えっとー一時半……って、え。なんでさん??
あれ、銀さんまだ出てなかったのかよっ。何ジャンプ読んでんだアンタッ」
「何言ってくれちゃってんのさ、新八ぃ。やり過ごそうと思ってたのによー」
顔を出した新八くんの唇があんた最低だなと小さく動いた。
あたしも頬をひきつらせながら言う。
「ねぇ、待ち合わせの時間何時だっけ?? 確か一時だったよねぇ??」
「え、そうだっけー?? 俺てっきり二時だと思ってたよー」
白々しい。ホントに白々しいにも程がある。白いのは頭髪だけで充分なのに。
しかも銀さんの視線の先は未だジャンプの上だ。
そりゃあね、あたしがジャンプの事で怒るのなんて、日常茶飯事だけどねっ!?
もう堪忍袋の緒が切れた。
右手の人差し指を銀さんにつきつけ、いい放つ。
「銀さん、あんたジャンプ断ちしなさい!!」
「……はい??」
「なんかもういい加減限界!! 今日から三ヶ月間ジャンプ禁止!! じゃないと別れる」
「いやいやいや、落ち着こうよさん」
銀さんがあわててあたしをなだめにかかる。
ジャンプという楽しみを奪われては堪らないと必死だ。
ふん、今更なに言われよーが意見は変えないわよッ!!
「いや、だってジャンプないと銀さん死んじゃうよ??」
「いっそ死ねばいい」
銀さんの懇願を一言で切り捨てる。
「鬼!! 鬼だろ、お前」
「なんとでも言え。鬼だろーがなんだろーがジャンプ読んでて彼女との約束忘れるクソ野郎よりはマシだわ。
だいたいさぁ、今日行こうとしてたとこ何処だか分かってる??
先着五十名様限定ケーキバイキングだよ??
あたしが必死こいて手にいれたバイキング優先チケットを無駄にするつもりですか、ねぇ??」
しかもこのチケットは本来友達があたしと行こうとしてもらってきたもので、
銀さんを連れて行ったら喜ぶだろうなーと思って、友達に頼み込んで譲ってもらったのだ。
何?? あたしの苦労は何?? 全部無駄骨ですか??
「い、いや……その、な……??
待たせたのは謝るからさ、期限直してバイキング行こうよ、な??
ジャンプのことは忘れて……」
「え、嫌だ。もう銀さん嫌いになった。バイキング神楽ちゃんと行く。
――ねぇねぇ、神楽ちゃんどこー??」
「あー、酢昆布買いに行ってますよ。多分すぐ戻ります」
成り行きを見守っていた新八くんが呆れ顔だ。
当たり前だ。こんなバカ野郎なんか見たことないもの。
「よし、じゃあ神楽ちゃんを待とうっと。――さて銀さん、ジャンプ断ち頑張ってね」
「いやいやいや、それにしても三ヶ月は長いだろッ。連載終わるもんは終わるぞ、三ヶ月あったらァ!!」
「あんたの人生も終わっちゃえばいい」
「さん、なんかダーク、ダークになってますよっ!!」
けっ。
ダークだろーがポークだろーがミートだろーが構うもんか。
あ、お腹減ってきた。くそ、本来なら今頃バイキングを楽しんでたはずなのにっ。
ぶつぶつと言い訳を考えていた銀さんが名案が思い付いたかのように嬉しそうに顔をあげた。
「だったらもなんか好きなもん一個断つのが筋ってもんでしょーよ。
俺だけって不公平だろ?? だから、も……」
本当に嬉しそうににまぁっと笑う。
「…………」
何よ、あたしが断つの嫌がって、話がなくなるの期待してるわけ??
……そうは問屋が卸さないわ、このマダオ(マジでだらしない男)が!!
あたしは困ったように眉を潜めて見せる。
「えー、どうしよー。大事なものかー。んー……」
そこでにっこりと笑って次の台詞だ。
「銀さんしか思い浮かばないや」
「何ィッ!?」
銀さんがすっとんきょうな声をあげる。
嬉しいでしょ。でも同時に嫌な予感もするでしょ。
今度はあたしがにまぁっと笑う番だ。
「じゃあ、あたしは銀さん断ちするね」
「――――ッ!!」
銀さんの顔がひきつる。
あ、なんか稲妻が見えた。銀さんの後ろに稲妻が。
あはは、ざまみっ。
「や、やっぱりいいよぉー。も付き合って断ってくれなくてもー」
「何言ってるの、一度言ったからにはちゃんとやるわよ、『銀さん断ち』。
銀さんの大事なもの制限するんだから、あたしもするのが筋だもんね」
ほら見なさい、手も足も出まい。
ふふんとあたしは笑って踵を返した。
「じゃああたしは神楽ちゃん見つけてバイキング行ってくるから」
一瞬だけ振り向いて、微笑む。
「じゃあね、銀さん」
銀さんはがっくりと肩を落とした。
それでもまだあたしは不機嫌だった。
諸悪の根源の銀さんを負かすことはできた。
――でも。
あたしは後ろ十メートルをついて来ている男を横目で見て、ため息をつく。
電柱のうらに隠れている銀髪野郎がビクリと肩を震わせるのを確認する。
そして傘を握って、力任せに前に降りおろした。
「なぁんでついて来てんのよアホ銀時ィィッ!!」
「うおぉぉっ!!!!」
何やら叫び声が聞こえたと思ったら目の前だった。
降り下ろされた傘を紙一重でかわし、肩で息をしている黒髪の男――土方十四郎が目に入る。
巡回中なのか、後ろには近藤さんと総悟くんもいた。
総悟くんがいるなんて珍しいな。
「おいコラてめぇ、なんのつもりだッ!!」
睨み付けてくる土方を無視して、あたしは近藤さんに視線を向ける。
「あれ、ゴリ……間違えた、近藤さん。総悟くんまで。みんなして巡回ですか?? ご苦労様」
「てめぇ今ゴリラって言おうとしただろ。つーか俺の話聞いてたか??」
土方は無視。ムカつくから。
総悟くんが無表情のまま聞いてくる。
「さん、今日はケーキバイキングだって言ってやせんでしたかィ??」
「あぁ……なんかね、あのくそバカ銀時のヤローはあたしなんかよりジャンプの方が大事なんだってさ」
拗ねるようにそう言うと、総悟くんは全てを察したようで頷いた。
「あー……なるほど。俺が一緒に行ってやりやしょうかィ??」
それは嬉しい申し出だが、さすがに銀さんの見ている前で浮気はよくないだろう。
見てないところならオッケーなのかというツッコミは聞かなかったことにする。
「……ううん、いらない。銀さんいじめのために神楽ちゃんと行くから」
ただただびっくりしていた近藤さんがぶちギレている土方を宥めにかかっていた。
「と、とりあえず、だからサンは今機嫌が悪いんだなー?? そういうことだ、許してあげろトシ」
「機嫌が悪いで斬りかかられるなんて、聞いたことねぇよッ!!
――おい、俺が何か悪いことをしたか?? 言ってみろ、あぁん??」
あたしはあえて無表情のまま返す。
「男の分際であたしの進路を塞いだ」
「んだとっ?? もしこれが傘じゃなくて刀だったら俺は死んでたかもしれねぇんだぞッ!!」
尚もキレる土方。
総悟くんがにやりと笑って自分の刀を差し出してきた。
「そうっすねィ。だからさん、これ貸しやすからもっぺんやり直してくだせェ。
思う存分斬ってくださって構わねぇんで」
「あ、ありがとー」
素直に受けとる。
「待てやコラ。てめぇ何総悟と密約交わしてんだ??」
「うるさいなぁこのくそ土方豆腐の角に頭ぶつけて死ね」
「残念だな、それぐらいじゃ死なねぇよ」
「そっか。んじゃ凍らせたバナナで後頭部ぶん殴ってあげるわ。記憶とか意識とか、いろいろとんじまえ」
「やれるもんならやってみろよ。ぶっ殺してやんぞ」
そう言って刀を取り出す土方。
あたしはそれに冷めた目線を投げかけて、無感情に言った。
「わー何この人、善良な市民に刃向けてるわー最低ー」
「わーホントだ最低ー。ついでだからこの際真選組も首になっちまえー」
「何か言ったか、総悟」
「いーえ別に何もー??」
睨みあう総悟くんと土方。
まぁ、総悟くんは楽しそうだったけど。
それから目を逸らして周りを見ると、ものすごく嫌そうな顔をした神楽ちゃんが目に入ってきた。
「あ、神楽ちゃんー。ねぇねぇ、ケーキバイキング行かない??」
「行くアル!!」
小学校だったら模範的な、元気な返事をしてこちらに駆け寄って、真選組集団を見て眉を寄せた。
「なんでこいつらがいるアルか。特にサド野郎」
「なんでィ、チャイナ。なんか文句あんのか」
「大有りアル!! に寄るんじゃねェ、が汚れるネ」
「あぁ?? てめェよりはマシかと思いやすが。酢昆布くせェんだよ。
さんにうつるだろィ。離れやがれ」
「うるさいアル。サドがうつる、に近付くな」
今度は神楽ちゃんと総悟くんが睨みあう。
総悟くんも神楽ちゃんも恐い顔だ。
土方がボソリと、こいつは元からSだろ、と呟く。
なんだこら。喧嘩売ってんのか。
埒があかなそうだったので、あたしは二人の間に入って、にっこり笑った。
「神楽ちゃんも落ち着いて、ね?? 早くバイキング行こうよ。
なくなっちゃうよ、ケーキ。――って事で真選組さん。あそこで隠れてるストーカー一名、ぶっ殺しておいて」
後半は土方に向けて。
あたしの指の先にいる銀髪を見て、神楽ちゃんと総悟くんが何やってんだあのバカはと同時に呟く。
君らなんだかんだで気合うよね。
土方は指先を見るまえに、眉を潜めて叫んだ。
「はぁあっ?? なんで俺らが――」
「とっとと行けよ。善良な市民がストーカー被害に遭ってんだよ。助けろよ真選組」
「分かりやした、さん」
総悟くんがいの一番に駆け出した。
土方が渋々といった感じに足を進める。
「なんだか知らねェが、とりあえず元凶はあいつなんだなッ?? だったら斬るまでだ」
一人だけ状況が飲み込めてない近藤さんが、不思議そうにこちらを向いた。
「なぁ、、あいつらなんで刀抜いて……」
「てめぇもとっとと行けよ」
「ひっ!! はいっただいま!!」
やっと近藤さんも駆け出す。
と同時に土方が叫び声をあげて銀さんに斬りかかった。
「うらあぁぁっ!!」
「え、なに多串くん。なんで俺斬りかかれてんのッ!? なんでゴリラまでこっち……」
「行こう神楽ちゃん。銀さんのことは見てみぬふりよ」
「了解アル」
「おいおいおいちょっと待ってさん!!
大好きな銀さんが助けを求めてんだから助けるだろ普通!! つーか助けて、助けてくださいッ」
背後から聞こえる、救いを求める声は無視だ。
大好きな銀さんとか自分で言う辺りが癪にさわる。
神楽ちゃんがにやにや笑いながらあたしの顔を覗きこんでくる。
「なんだかんだでは銀ちゃんにベタぼれアルからな」
「うるさいわよ神楽ちゃん。バイキングつれてかないわよ」
「あいすみませんっしたー」
「と言うわけでね、あたしは銀さん断ちをして銀さんはジャンプ断ちをすることになったの。
……って、神楽ちゃん聞いてた?? 今の話」
飲み物を飲むような勢いでケーキをかっ食らう神楽ちゃんに、あたしは半眼を向けた。
食べ終わった皿を十枚重ねて置いて、神楽ちゃんはもぐもぐごきゅんと頷いた。
「大丈夫アル。だいたいの事情は飲み込めたネ。要は銀ちゃんのが好きすぎて仕方ないからツンデレしてるわけだヨ」
「事情?? ねぇ今君が飲み込んだの事情?? ケーキの間違いでしょ。ケーキしか飲み込んでないの間違いでしょ」
事情だとしてもどういう事情なのよそれは。
さらに口の中に放り込まれていくケーキたちを見て、店員さんが悲鳴をあげた。
厨房で追加ケーキを急ぐよう要請する声が聞こえてくる。
ホントによく食べるよねこの子は。
かくいうあたしも既に十五個は食べている。
元から食欲旺盛で育ち盛りの神楽ちゃんとは違って、これはヤケ食いだった。
何に対してかと問われると返答に窮するけど、確かにこれはヤケ食いだった。
また新たにケーキを十切れ取ってきた神楽ちゃんが口を開いた。
……店員の顔色がだんだん青くなってきた。
「でもが銀ちゃんにベタぼれなのは本当ネ。だからジャンプなんかに嫉妬するアル」
「……ま、そうだけどさ」
ぷくーとあたしはむくれてみせた。
ショートケーキに乗っている苺をフォークでつつく。
別に神楽ちゃんに不満があるわけじゃないけど、ホントは銀さんと来たかったな。
「私は予言するネ!! きっとは銀ちゃん断ちに失敗するアル」
「……縁起でもないこと言わないでよ」
「ホントネ!! にそんなの耐えられるわけないネ」
したり顔の神楽ちゃん。
ちぇー。……まぁ、確かにその通りだけど。
三ヶ月なんてきっと耐えられない。
けどそれは大した問題じゃない。あたしは、銀さんに一時でもジャンプから離れて欲しかっただけだから。
ついでに来週から仕事が一気に忙しくなるから、それに集中したいと言うのも重なった。
とにかく、どうせ銀さんがジャンプを三ヶ月も読まないなんてことできるはずない。
せいぜいもって一ヶ月だろう。いや、一ヶ月にも満たないかもしれない。
それでもよかった。
そうしたらあたしは一応憂さを晴らすことが出来るし、銀さん断ちも終了出来る。
だけどそれを神楽ちゃんに言う気はなかった。
なんだかんだでこの子、口軽いからね。
きっとすぐに銀さんにあたしの思惑が伝わってしまうに違いない。
そうしたらきっとあれだ。
銀さんはジャンプ断ちもそこそこに、あたしの元へやって来て、嫌らしい笑みを見せて言うんだ。
『なんだぁー?? ちゃぁん。銀さんにかまって欲しかったーぁ??』
とかってっ!!
あるいはあれだ。妙に真面目な顔をしながら、
『がそんなに俺のこと思ってくれてたなんて知らなかったよー。
よし、だったら今すぐ愛を確かめに行こ――』
とかって言ってそのまま……。
「どっちに転んでも最悪っ!!」
「何がアルか」
思わず声に出してしまった。
くそ、神楽ちゃんに変な目で見られたじゃん。
この子に変な目で見られるってすごいよ、すごいことだよ。
ちっとも誇れはしないけどさ。
何もかもあの銀時がドバカでド変態なのが悪いんだ。
ようやく満足したらしい神楽ちゃんが丸くなったお腹を抱えて息をついた。
「あー、喰った喰った」
おっさんかお前は。
おまけに、爪楊枝で歯の間に挟まったなにかをとろうとしている。
ケーキバイキングで何が歯の間に挟まると言うんだ。
「まぁあれアル」
爪楊枝をぺきんと折り畳みながら神楽ちゃんは言った。
それをそのまま皿にのせる。
――とても様になっていた。
「は、もうちょっと素直になった方がいいアル。そんなんじゃ銀ちゃんどころか私まで離れてくヨ」
「……はぁ」
一体何をしたら神楽ちゃんが離れていくんだろうか。
酢昆布を持ってさえいたら自然と寄ってくる気がするけれど。
まぁ、神楽ちゃんの言うことにも一理ある……ような気がするので、本当に癪だけど、気がするので、あたしはコクンと頷いておいた。
さて。
あたしが銀さん断ちを始めて、一週間が経った。
あたしはまたイラつきながら夜遅くの帰路を行っていた。
会社の上司はウザいし、取引先の相手だって高慢だ。
「あーっ、もうっ」
会いたい。
たった一週間、まだ一週間で、あと二ヶ月と三週間もあるというのに。
あたしはつくづくバカだ。
自分で言い出しておきながら、こうも寂しいだなんて。
住んでいるアパートの少し手前でため息をつく。そしてそのまま顔をあげてぎょっとした。
「………」
銀さんがいた。
アパートのあたしの部屋の扉の前に、腰を下ろして夜空を見上げている。
なにやってんのさ、あの人は。
嬉しさより前に、呆れと驚きが先に出た。
今会うのは確実にルール違反だ。
だからといってUターンすることもできず、あたしは銀さんから顔を背けたまま部屋に近付いた。
銀さんがこっちを見たのがなんとなくわかる。
よぉ、と片手が上がった。
「そろそろ銀さんが恋しくなる頃かと思ってさぁ、来てあげたんだよ」
ふてぶてしい。ほんっとふてぶてしい。
でも。
――くそぅ、かっこいいじゃないか。
まだ顔を背けたままのあたしを見て、銀さんは頭をぽりぽり掻いた。
「やっぱ話してくんねーか、仕方ねーな……」
何が仕方ないのかと視線を向けるよりも速く、銀さんの手があたしの肩を掴んだ。
そのままくるりと回れ右させられる。
「えっ……」
かと思えば、銀さんの腕が首に回されていた。
後ろ向きに抱きしめられる体勢になる。
銀さんの息が耳にかかって、思わず頬が熱くなった。
「………」
お互い何も言わないまま、時だけが過ぎる。
あたしの赤くなった頬を見て、銀さんが少し笑った気がした。
「……よし」
呟いて、銀さんは手を離す。
そして、
「じゅーでんかんりょー」
とだけ言ってこちらをちらりとも見ずに帰っていってしまった。
「………」
なにそれ。
充電完了??
呆気に取られたままあたしはふと郵便受けを見た。
「……あ」
そのなかにぞんざいに入れられていた、少ししわのある紙切れを取り出す。
『ケーキバイキングペア無料チケット』。
先日行ったところには少し劣るけど、まぁまぁ人気のあるケーキ屋さんのものだ。
くしゃくしゃに丸められた紙も取りだし、開く。
それは紛れもなく銀さんの字で、乱暴に走り書かれていた。
『来週日曜に迎えにくるから』
――あぁもう、なんていうか。
あたしは思わず笑ってしまった。
大好きだ。
銀さん断ち中のあたしに、一体どうしろと言うんだろう。
ルール違反になっちゃうじゃん。
どうしようもなく、あたしは頭を抱えて自嘲気味に笑う。
「仕方ないなー、もう」
仕方ないから行ってあげよう。
行かなければ彼はきっと、ルール違反したときよりも怒るだろうから。
何かを断つ時は期間を決めろ
あとがき
これを書いているのは入試のちょうど五日前です
現実逃避なのです
このワード言ったの三回目な気がします
とりあえずなんかいろいろぐだぐだ短編でした
銀さん夢のはずなのに銀さん三分の二くらいしか出てこないし
こないだ読んだ本に「じゅーでんちゅーう」みたいなこと言う激カワな娘がいたからなんか書きたく
なって書いた代物です
短編もうちょい増やしたいな
02月10日 桃
とかってページに載せるのかなり遅くなりましたすみません。