永遠の愛を語ってる暇があったらほくろの数でも数えとけ

「……あれ」

ふと目が覚めた。

寝ころんだまま周囲に視線を巡らせる。
真選組の屯所にある、あたしの部屋だ。

「えっと……」

あたし、何してたんだっけ…??
記憶障害もここまで来ると重症だ。

ふと、頭側のほうに視線を向けると、沖田さんの赤いアイマスクが目に入った。
壁にもたれてあぐらをかいたまま、寝ている。

「……おきたさ、――つッ」

起き上がろうとして、体に激痛が走った。

今さら気付いたのだが、頭と肩と腹部と足と腕、全部で五ヵ所に包帯が巻かれている。
一番痛むのは腹部だ。

なんだろうこれ、撃たれでもしたのかな。
そう考えると見に覚えがあるようなないようなで、うぅむと唸っているうちに沖田さんが目を覚ました。

「なんでィ、起きやしたか」

アイマスクを乱雑に取り外し、首にかける。

「あの…沖田さん……」

「なんでェ」

「えっと…その……、あたし、なんでこんな怪我してるんですか??」

「………」

数秒間目をぱちくりとさせたあと、沖田さんは小さくため息をついた。
そしてあたしの額に手をあてがい、眉を寄せる。

「なんてこったィ……。
頭撃たれたせいで、記憶障害が悪化するたァ……」

すいません、悲愴な顔でかぶりを振るのやめてください。
なんで頭抱えんの!? なんでっ!?

一頻り悲しみを表現したら、突然真顔になって沖田さんは言った。

「……これでもまだ思い出せねェのかィ??」

「………」

いや、今の貴方の行動に、何かを思い出させるような要素があったと言うのですか!?

相変わらずの傍若無人ぶりだった。

半眼になるあたしを見て、沖田さんはまたため息をつく。

「じゃ、こうしたらどうでィ??」

そして突然、座ったままあたしを抱き寄せた。

「こうして、抱きかかえてやったはずですがねィ」

「え……」

混乱するあたし。

いやちょっと待って待ってっ。
顔近い顔近い顔近いっ!!

自分の体温があがるのを感じる。
吐息が耳にかかる。

「まだ思い出せねェか…?? だったら次は――」

「わああぁぁっ!! 待ってっ、待ってください!!
思い出します、死ぬ気で思い出しますから待ってください!!」

まだ次があるの!?
なに、過去の自分こんなにいい目……じゃない、恥ずかしい目にあったわけ!?
よく気絶しなかったね……じゃない、気絶したから今ここで寝てたのか!!

体を無理矢理離すと、沖田さんは残念そうに舌打ちをする。

「これからが面白いってのに」

「面白がらないでくださいっ!!」

このドSが。

悶絶するあたしを楽しそうに眺めながら、沖田さんは聞く。

「で、思い出せやしたか?? 無理なら……」

「わーってます!! すぐ思い出します!! 今すぐに!!」

あたしは頭をかきむしる。

思い出せ自分。
いやマジで思い出せ自分。
どうしてあたしは怪我している??

部分的にだけ血の染みのある包帯。
頭――左肩――お腹――左足――左腕。

部分的??
なら剣ではなく銃だ。

銃?? 銃声??
撃たれる?? 撃つ??

不意に浮かび上がる情景。
血にまみれて這いつくばった男が、醜く笑って銃を構えている。

――あぁ、そうだ。
何もかも思い出した。

「思い出しやした?? 何もかも??
俺が、助けに行ってやったことも??」

あたしは頷く。

「はい。……ていうか、沖田さんなんであんな所にいたんですか??」

「――その前に」

がしっと頭を掴まれる。

「感謝の言葉はねェのかィ?? ほら、沖田総悟様ありがとうございましたとか、言ってみなせェ」

「ドS王子様ありがとうございました」

「よし」

今のでいいんだ!?

「メールが返ってこねェもんで、あんたを探してたんでィ。
そしたら運よく瀕死のところに出くわした訳でさァ」

運よくって……。
あんなところ、そんなによく通りかかる場所だろうか。
なんかこういうの、少女マンガでよくあるよね。

そう思って問うと、沖田さんはサディスティックな笑みを見せる。

「下僕のいる場所はなんとなく分かるんでィ」

「げぼ、く…ですか……」

ひどい言われようだ。
ちょっとでもロマンス感じたあたしがバカだった。

あたしの落胆を知ってか知らずか、
沖田さんは勝ち誇った笑みであたしを見下ろし、
あたしの頭を掴んで髪をぐしゃぐしゃにする。

「まぁこれに懲りたら、単独行動は避けるこったな。
次は守ってやれるか分からねェし、
俺と組めばてめェも負けねェだろィ??」

そうとだけ言って立ち上がり、歩き出す。

「……どこ、行くんですか??」

何故か不安になって聞いた。

バカだあたしは。
何を不安に思ったのだろう。

すると沖田さんはあたしの部屋の襖に手をかけてから、不意にこちらを振り返った。

「昼寝でィ」

「え……はぁ」

さっき寝てなかったか、この人。

本当によく寝る。
眠れないなんて事態、彼にはないんだろうなぁ。

あたしの呆れを余所に、沖田さんは堂々と部屋を出ていった。

残されたあたしは、小さくため息をついて再び横になる。
廊下から怒声が聞こえてくる。

「総悟ォッ!! マヨネーズとラード入れ換えたのてめェだろッ!!」

ガラリと襖が開く。
入ってきた土方さんに、冷たい視線を向けてやった。

「沖田さんならさっき出ていきましたよ」

「――なんだ、起きたのかお前」

あたしを見下ろして言って、土方さんは畳に腰をおろす。

いやなんで座るんだよ。
もう説教とかいらないしね、とっとと沖田さん追いかけてください。

土方は何も言わずにタバコに火をつける。
慌ててあたしは体を起こす。

「ちょ、なにタバ――」

なにタバコ吸ってんだタコ、と言い終わる前に、土方さんはあたしの頭をがしっと掴む。

あれ、なんかデジャブ??

「その前に言うことがあんだろ」

「………」

どう考えても感謝の言葉を待っている訳ではなさそうだ。
少し考えてから、あたしは頭を下げた。

「勝手に行動してごめんなさい」

「……よし」

やっと頭から手が離れていく。
よしじゃねェよ、なんだあたしは。犬かっ??

「本来なら始末書書かせるんだが……、怪我してっからそれはまたあとだ。
……それより、総悟のバカはどこ行った??
誰かに冷蔵庫の中のマヨの中身がラードと入れ換えられてたんで、
絶対総悟だと思ったんだが」

「……画期的な嫌がらせですね」

間違いなく沖田さんだ。
土方さんに嫌がらせをする者なんて、
真選組には沖田さんをおいて他にいない。
もしいたとしても、マヨネーズとラードの中身を入れ換えるなんて手間のかかる嫌がらせを
喜んでやる人はそうそういない。

「沖田さんは確か、寝るとか言ってました」

「んだと??」

眉を寄せて腰を軽く浮かせ、すぐにおろす。
なに、何がやりたいの貴方は。

「……ま、今日くらいはしょうがねェか」

「………??」

あたしは首をかしげる。
珍しい。土方さんが沖田さんの睡眠を止めないなんて。

槍でも降るんじゃない??

そう思って窓の外を見ると、土方さんがあたしを睨んだ。

「今日は一日晴れだ」

「………」

読まれてましたか。

「総悟はここんとこずっと寝てねェからな。特別措置だ」

タバコの煙を口から吐きだす。
だからタバコやめろっつってんだろ。

「寝てない?? どういうことですか??」

「お前を連れて帰ってきたあと、すぐに仕事があったんだよ。転生郷絡みのな」

「はぁ」

適当に相づちをうつ。

そういえば桂さんたちはどうなったんだろう。
無事仲間を助けられたんだろうか。

「おい聞いてんのか、お前??
その仕事が終わった頃にちょうどお前の治療も終わったんで、
あいつはそれからずっと、3日間寝ずにお前の看病してたんだ。
誰もお前に触れさせずに、誰も近づけないで」

「………」

「お前が思ってるよりずっと、あいつはお前のこと大事に思ってるはずだ」

あたしは沈黙を返した。
いろいろと、頭が混乱していた。

こちらの様子など気にとめないクソマヨ方は、煙を吐き出して言う。

「お前は、どうなんだ??」

あたし、あたしは……。

あたしは、唇を尖らせて土方さんに言う。

「んなこと土方さんに教える訳ないでしょう。
あとタバコやめてくださいこのニコ中が」

「ふざけろガキ」

永遠の愛とか語ってる暇があったら

ほくろの数でも数えとけ

抱きしめたい 抱きしめていたい
だけど君は 僕のものじゃない
歪な心が今
抱きしめたい 抱きしめちゃいけない
溢れるほど 溶けるほど 求めているのに
タクシー止めて 約束も交わさずに
君は手を振る

君の声も その細い肩も
その瞳も 僕のものじゃない
どんなに 傍にいても
君の未来 壊さない限り
この想いを 叶えることは出来ないよ
ひとときの夢 痛いほど好きなのに
夜が終わってく

東方神起 TAXI


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あとがき
タイトルは適当です
中身に一切関係がありません。
あとニコ中って
ニコ動中毒の略らしいす。
あとほくろって
黒子とか黶とかって
書くらしいす。
無駄すぎる豆知識。
そしてこんなでも
一応テスト前。
9月27日 桃