は小さな紙袋を抱えたまま、右往左往していた。
我愛羅……くん、まだこないのかなぁ。
先日のお礼にと、クッキーを焼いたのだが渡すタイミングが掴めずに、彼が修行している場所の前でうろうろしているのだ。
「はぁ……」
ため息をつきながら、すぐそばにあった切り株に腰掛ける。
クッキーの入った袋を弄びながら修行が終わるのを待っていると、テマリがやってきた。
「………?」
不思議そうにこちらをみながら、テマリは先に歩いていった。
テマリさんがきたなら、我愛羅くんももうすぐくるはず……。
そう考えてクッキーの入った袋を強く握る。
予想通り、我愛羅は来た。
の姿に気づくと、表情が一気に不機嫌さを増した。
「あ、あの、先日は、ありがとうございました。……それで、その、お礼を……」
「………」
黙ってを見つめる我愛羅の後ろからカンクロウが出てくる。
我愛羅は、ニヤニヤと笑うカンクロウを一瞥すると、に言った。
「いらない。忘れろと言ったはずだ」
「…でも……」
「いらぬ世話だ。……消えろ」
冷たく言い放つと、我愛羅はさっさと歩いていってしまった。
カンクロウが、気遣わしげに手を差し出した。
「オレが、渡しといてやるじゃん」
「……え?」
「オレとテマリも食うことになるけど、買ってきたって事にして、三人で食べて、感想聞いてやるじゃん」
「あ……ありがとうございます……」
おずおずとそれを差し出すと、カンクロウはにおいを嗅いで笑った。
「いいにおいがする」
「ほんとですか?」
はぱっと目を輝かせた。
カンクロウはうん、と頷いたあと聞いた。
「……名前は?」
「えと、です」
「、ね」
ニカッと笑うと、カンクロウはの手を引いて歩き出した。
「オレの家に連れて行ってやるじゃん」
「ここで、待っとくといいじゃん」
家の前で足を止め、カンクロウはの腕を放した。
「ここならたぶん声が聞こえるから」
「ありがとう……」
カンクロウは片手を振りながら家の中に入っていった。
「テマリー、我愛羅ー、クッキー買ってきたじゃん」
カンクロウが袋をあけた。
テマリがなにやらつぶやきながらクッキーを食べる。
それに続いて我愛羅もクッキーに手を伸ばした。
「…………」
「ど、どうだ、我愛羅……?味は……?」
カンクロウがそう問うと、二つめのクッキーを手に取っていた我愛羅は、無表情のままクッキーを握りつぶした。
「………っ」
家の外でクッキーがつぶされた音を聞いたとき、は胸がつぶされたような思いだった。
カンクロウが叫ぶ。
「せっかくがくれたのに、なにするじゃんっ」
「……やはりそうか」
慌ててカンクロウが口元を押さえたが、もう遅い。
我愛羅は立ち上がり、戸口の方へ歩き出した。
戸の外で、は息を呑む。
急いですぐそばの太い木に上り、隠れた。
戸が開き、我愛羅が出てくる。
「………」
我愛羅は辺りを見回し、が隠れている気のところで視線をとめた。
バレた……。
血の気の引く音を生で聞いたは、動くこともできずに硬直していた。
すると、我愛羅は黙ったまま木の下まで歩み寄ってきた。
「しつこい奴だな……」
「………」
もう観念して、は木から飛び降り、下を向いた。
殺される……。
「すみません……。でも……」
我愛羅がゆっくりと右手をあげた。
びくん、と、の肩がはねる。
「……嫌いじゃない」
「……は?」
我愛羅は砂を操り、家の中からクッキーを一つ取ってきた。
「このクッキーは、嫌いじゃない」
は大きく目を見開いた。
口元が緩むのを、自分でも感じたが、止めることはできなかった。
「ありがとうございますっ!」
愛を教えて その2 ……ジャナイ
(その言葉は、気に入ったと取っていいんでしょうか)(彼は小さく微笑んだ)
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あとがき
なんかびみょ。
後半に期待してけろ。
カンクロいいやつじゃぁ。
3月31日 桃