「すまない」
あの我愛羅がそう言った。
テマリとカンクロウが顔を見合わせた。
珍しいこともあるもんだな……。
そう思っていた。
しばらくそのまま進んでいると、市が見えてきた。
あ、そうだ、とテマリは呟き、森の中の地面に降りた。
「買う物があるから、市に行ってくる」
「あ、それならオレも。……我愛羅はどうじゃん?」
カンクロウがそう言うと、我愛羅は首を振った。
「いい」
「そうか」
二人は我愛羅をすぐそばの木にもたれかけさせると、市に向かって走っていった。
あの女もきてそうだからな……。
その市は、と我愛羅が出会ったところだった。
案の定、いた。
はまた小麦粉を買いにこの市へ来ていたのだ。
「あれ……?」
テマリとカンクロウがいる。
ひっそりと近づいていくと、テマリがこちらを向いた。
「あ、この間の……」
名前が出ないらしく、口をぱくぱくとさせている。
「えと……です」
「あー、じゃん。買い物か?」
カンクロウが明るい声をあげた。
「はい、小麦粉を買いに……」
「我愛羅なら、そこの森にいるじゃん」
「え……」
キョロキョロとしていたことに気付かれたのだろう。
頬が赤くなるのを感じながらは聞いた。
「行って、いいんですか?」
「あぁ。もし何かされかけても、今あいつ満身創痍だから、なにもできないじゃんよ」
会いたい。もし話ができなくても、姿を見るだけでいい。
「ありがとうございますっ」
は駆けだした。
その会話を、ガラの悪そうな男たちが盗み聞いていた。
「いた……」
鼻を頼りに道を歩いて、我愛羅の元へたどり着いた。
我愛羅は木にもたれかかって、呆れた顔をした。
「またお前らか……」
お前ら……?
不思議に思って振り向くと、背後に何人もの男たちがいた。
「こんにちわ、砂爆の我愛羅さんよぉ。この間の仕返しにきてやったぜぇ」
前にに絡んで、我愛羅に返り討ちにされた男たちだった。
「やっほー、お嬢ちゃん。このあといっぱいお話ししようねぇ」
嫌な笑顔を浮かべながら、に手をさしのべてくる。
「嫌ッ」
走って我愛羅のすぐ脇に行く。
「ごめんなさい、私が気付かなかったばかりに……」
我愛羅は黙って自分の手を見つめた。
チャクラがもう、残り少ない……。
ニヤニヤと笑いながら、男たちがクナイや手裏剣を取り出す。
が意を決したように、手のひらを口元へ近づけた。
「待て」
我愛羅はの腕を掴んだ。
「お前は逃げろ。邪魔だ」
「嫌ですっ。私だって戦えます」
は我愛羅を睨んだ。
彼が今戦える状態にないことは、分かり切っていた。このまま戦っていたら、命を落としかねない。
「うるさい」
我愛羅はゆっくりと立ち上がった。
「殺すぞ」
ゾクッと、寒気が走った。
そのときに我愛羅がに向けた視線には、確かに殺意がこもっていた。
は渋々引き下がり、走っていった。
「おい、お前らはあのガキを追いかけろ」
一人の男が仲間にそう命じ、仲間が二人ほどを追おうとした。
「行かせるか……」
我愛羅の砂に阻まれて、進むことができない。
「余計なことしてて、自分がケガしてもしらねーぞぉ?」
楽しそうにそう言うと、男が我愛羅にクナイを投げつけた。
しかし、砂の盾で阻まれる。
「やっぱり、クナイくらいじゃだめかぁ……」
男がそう言ったとき、我愛羅の背後に何者かが忍び寄り、恐ろしいスピードで我愛羅の後頭部を打撃した。
我愛羅は急に意識が遠のくのを感じた。
「お前……」
うっすらとの姿を見た我愛羅は、に聞いた。
「何故……」
「やっぱり心配で、戻って来ちゃいました。それで……これ以上無茶されたら困るんで、しばらく眠っててください」
我愛羅は何も言わずに、倒れた。
それを受け止めてちゃんと寝かせた後、は手のひらを口元へ近づけ、親指を軽く噛んだ。
ぽたり、と一滴の血が流れ出る。
すると、すぐにの頭から黒い猫耳が生えだし、黒く長いしっぽも生えた。
瞳は黄色く光り、爪は鋭くとがった状態で、どんどん伸びていく。
「なんだ、お嬢ちゃん。コスプレか?」
似合ってるぜー、と騒ぎ立てる男どもを振り返ると、は足にチャクラを集め、跳んだ。
「……あら……我愛羅……」
我愛羅が目を開けると、テマリとカンクロウが肩を揺さぶっていた。
「お前、一体この死体はなんだ?」
テマリが厳しい表情で聞いてくる。
それには答えず、痛む後頭部に手を当て、我愛羅は聞いた。
「あいつは?」
「あいつ?」
「女がいなかったか?」
テマリは不思議そうに答えた。
「女なんていなかったぞ。それより、こいつら見てよ。みんな頸動脈切られて死んでるのよ」
「まるで化け猫に襲われたような死に方じゃん」
カンクロウも言った。
意識を完全に失う直前に見た物。
それは一体なんだったか。
「猫……」
我愛羅は小さく呟いた。
愛を教えて その3 ショウタイ
(一体誰なんだ?)(その問いに返事はなく)
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あとがき
恋愛のれの字もないっすね。
ていうか主人公何もんだよみたいな。
それは次の話で明らかになるんですがー
んま、がんばって読んでくださいな。
04月05日 桃