「、出かけるぞ……うん!!」
オイラは旦那の部屋の扉を開けてそう叫んだ。
部屋の中で旦那に手を取られて何かを教え込まれていたが、静かにこちらを向い
て無情にも言う。
「嫌」
「………フン」
小気味よさそうに旦那が鼻で笑う。
それをじろりと睨み付けた後、オイラはに言った。
「んだと、コラ。せっかく任務がねぇからオイラが遊んでやるっていってんのによ、うん?」
「だからなのよ」
対して興味もなさそうには言う。
「デイとサソリさんが休みだから、あたしはサソリさんに傀儡の術教わるんだから」
「そんなの覚えなくてもいいじゃねぇか、うん!! お前はオイラが守ってやっからよ」
「デイじゃ頼りないもん」
また旦那が鼻で笑う。
傀儡の術を『そんなの』呼ばわりされたのがむかついたのか、先ほどよりも嫌みったらしい笑いだった。
「……じゃあ、オイラの起爆粘土の作り方教えてやるから、今日は出かけようぜ、うん??」
「ヤダよ。手のひらに口なんか作りたくないもん」
「う」
返す言葉もなく、オイラはうつむいた。
少しはかわいそうだと思ってくれたのか、サソリの旦那が口を開いた。
「行ってきたらいいんじゃねぇか??」
「え、だってぇー」
がぷぅと頬を膨らませる。
あぁ、そんな顔もかわいいんだけどな、うん!!
「また次の時じっくり教えてやっからよ、……手とり足とりな」
「………」
何を想像したのか、の顔がほんのりと赤く染まる。
意味ありげに笑うと、旦那は自分の部屋を出て行った。
まずいな……。サソリの旦那の本体は顔いいからな、が惚れちまうかもしれねぇ、うん。
さっきの発言だって、どう考えてもオイラに対する挑戦だしな、うん。
まぁ、オイラの発言が勘に障ったのが大きいとは思うけど。
オイラがうむむと悩んでいると、が聞いた。
「で、どこにいくの??」
「あ、あぁ……あっちの方で祭りやってるらしいから行こうかと思ってな、うん」
「ふぅん……。まぁいいよ、いこっか」
あっさりとそう言うと、立ち上がり、も部屋を出て行く。
「何か準備するものあるー??」
オイラも彼女を追いかけて部屋から出て、返事をした。
「特にねぇよ、うん。あ、途中で店に寄って着替えるからな??」
「はぁい」
さすがに暁装束だと目立つだろう。
特になどは襲われたとしてもそれに反撃する手立てがない。
目立たないような普通の格好をした方がいいと、そう思ったのだ。
「どんな御洋服がよろしいとか、ありますカ??」
店員が丁寧にに聞いた。
は店内の洋服を見回した後、オイラの方を向く。
「どんな御洋服がよろしいとか、ありますカ??」
過剰なまでに店員とそっくりの声を出して、そう聞いてくる。
オイラたちよりは年上の、若い女性店員がピキッと頬を引きつらせる。
「えっとだなー……うん。には白が似合うからなァ……」
そう言って少し離れたところにある、それを指さす。
「あれとかどうだ……うん??」
「え……アレ??」
が顔をしかめた。
「お似合いですよ、お客様」
まだ顔が少し引きつっている店員が言った。
オイラは笑いをかみ殺しながらに言う。
「似合ってるぜ、うん。雪女みたいで」
じろりとがオイラを睨んだ。
が着たのは、白地に小さな紅い花を所々に散らした浴衣だった。
しかも白く長い髪はそのまま下ろして。
周りに雪を散らせば、雪女そのものだ。
目が赤い辺りなんて、もう……。
そこまで考えてオイラは考えをやめた。
が恐ろしい眼差しで見てきていたからである。
凍え死にそうだな…うん。
「さて、んじゃオイラはこれ着るか」
早々に殺気を出しまくっているから目をそらし、無難な色遣いの浴衣を手に取る。
勇み足でこちらに寄ってくると、は表情を一変させて可愛らしく小首をかしげた。
「デイはこれ着てよ、ね??」
「……っ。いや、だけどな、うん?? これとお前じゃ目立ちすぎるだろ…うん」
が指したモノは黒地に小さな紅い花を所々に散らした浴衣、つまり、が今着ているものの色違いだ。
しかも、白と黒だから綺麗なまでに対極だ。
暁装束と大差がないような気が……。
「いいじゃん。お揃いだよ?? 可愛いじゃない」
「………ッ」
可愛いのはお前だよ、そう言おうとしてやめる。
しょっちゅう言っているとありがたみが減るからな……うん!!
「じゃあ、これにするぞ、うん。着せてくれ」
店員は深々とお礼すると、その浴衣を手に持って店の奥へと連れて行った。
「んじゃ行くか、うん」
着替え終わったオイラは、ひょいとの手を取った。
はその手になんの関心も示さないままオイラの横を歩いた。
屋台が建ち並ぶなか、人混みに紛れるとが体を少し硬くした。
「大丈夫か??」
「………ん」
小さく頷き、はオイラの手をギュッと握った。
は幼い頃から大人数と接したことがあまりないので、人混みにくると圧迫感を感じるらしい。
「悪ぃな、連れてきて」
「だいじょぶ」
それが分かっててオイラが彼女をここに連れてきたのは、今夜花火大会があるからだ。
に爆発を見せてやりたいからな!! うん!!
「なにか喰いてぇもんとかあるか??」
「わた飴……」
「ほかには??」
「クレープ」
とりあえずオイラたちはまた人混みから離れて花火が見えそうな場所に移動した。
楽しませに来たのに、気分悪くされたら元も子もないからな、うん。
「ここで待ってろ、うん。いろいろと買ってきてやるから」
「ありがと」
気にすんなと手を振って、オイラは歩き始めた。
とりあえず、が欲しがっているわた飴とクレープは買うにして、ほかになにかご飯ものを買わなければいけねぇな……うん。
そう考えながらぼんやりと屋台を眺め回していたとき、雑貨の屋台で目がとまった。
これ…に買ってやりてぇな……。
「これ、買うぞ……うん」
「へぇ。どうぞどうぞ」
渡されたそれをもったままほかのものも買いに行き、途中で捕まえた写真屋も引き連れてのところへ戻った。
「なに、その人」
「写真屋だ、うん。二人で写真とろーぜ。な??…うん」
「はぁ??」
笑顔でそう言うと、は怪訝げに眉をひそめた。
「何でいきなり??」
「これをお前にやるからよ、それにいれようと思ってな……うん」
そう言って、先ほど買ったものをに見せた。
それは、ふたの開くタイプのロケットペンダントで、中に小さな写真が入るようになっている。
綺麗な銀のペンダントだ。
生憎一つしか売っていなかったので、オイラの分はない。
だが、が持っているだけで充分だろう。
「綺麗……。ありがとね、デイ」
そう言ってにっこりと笑う。
オイラはこの笑顔に弱いんだよな、うん。
「えーっと、もう撮っていいですか??」
「あぁ。悪ぃな、うん」
「……はい。撮りますよー、並んでー」
二人で並んでにっこりと笑う。
写真屋がインスタントのカメラを構えた後、ぱちりと音がした。
機械音がして、小さな写真が出てきた。
「どうも、ありがとうございます」
がそうお礼を言うと、写真屋はぺこりと頭を下げて去っていった。
どこから取り出したのか、はさみでその写真をくりぬくと、ロケットペンダントの中にそれを入れ、首から提げた。
「えへへ。ホントにありがとね」
ペンダントを嬉しそうに見つめた後、また笑う。
あぁもう、ホントに可愛すぎるぞ、うん!!
普段大人びた顔ばかりしているの、こういう可愛い子供らしい表情をみれるのは、オイラだけだと思う。
「ほら、もう食わねぇと、花火に間にあわねぇぞ??」
照れを隠そうと顔を背けてそう言うと、は素直に頷いた。
「うん。んじゃ、いただきまぁすっ」
がたこ焼きを頬張る。
オイラはその横顔をぼんやりと眺めていた。
大量に買ってきた食べ物がだいぶ底をつきかけてきたとき(どんだけ食べたんだ、うん??)、暗くなっていた夜空に、紅い花が咲いた。
「わぁ……ッ」
が、綿あめを食べる手を止めて、空を見上げた。
続いてまたぱぁん、と音が鳴り、今度はオレンジ色の花が広がっていった。
無邪気にははしゃいでいる。
普段なら、絶対に見れない光景だ。
「見てみて、デイ!! 綺麗だよッ!!」
「あぁ。そうだな…うん」
に寄っていってその肩を抱く。
寄り添って空を眺めて、聞いた。
「来て、よかったと思うか……うん??」
小さくは頷いた。
そのあと、また空を見上げて呟く。
「あーいうのを、デイは芸術っていうんだね……」
「…うん??どうかしたのか??」
何か含みのありそうなその言葉に、オイラは首をかしげた。
「ね。なんであたしは“芸術”なの??」
「………」
「あたし、爆発しないよね?? それなのに、芸術?? だから、出来損ない??」
別に、爆発しないものは芸術じゃないなんて、思ってはいない。
現にオイラはイタチの野郎にも、芸術を感じた。
でもそれをに知られるのは癪だから、あまり口には出したくなかった。
「確かに、オイラは言った。お前は、芸術の出来損ないだ、ってな…うん。
だが、それは爆発しねぇ、って意味じゃねぇよ、うん。
脆くて、弱くて、誰かに守られねぇと生きていけねぇ。
そういうところが、出来損ないだって思ったんだよ……うん」
「じゃあ、もしあたしが出来損ないじゃなかったら、デイはあたしのそばにいた??」
「………わかんねぇよそんなこと。でも、オイラはのそばにいたいと思うな…うん」
それを聞いて、は安心したように笑った。
あたしも、と小さく呟いてからまたオイラの手を強く握る。
「今、あたしのそばにいてくれてるだけで、充分だよね」
また、夜空で花が開く。
は急にオイラの手から離れると、オイラと向き直って言った。
「デイ。……大好きだよ」
照れくさそうに笑って言ったその言葉は、オイラが初めて彼女の口から聞いた単語で。
嬉しさよりも先に、驚きの感情が出てしまっていた。
「………」
しばらく呆気に取られていて(オイラらしくもねぇな…うん)、やっと我を取り戻したときに出てきた言葉は、ただ一つ。
「オイラもだぜ、うん!!」
きっとそれは、神様がくれた幸せのひとときで
後からやってくる苦しみを、ごまかすために存在したんだ
不出来の芸術 3
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あとがき
ぐっはあぁぁ
デイダラが大人っぽすぎてだめだぁ
んでもそうしないとストーリーが進まない……
どうしよどうしよ危機だぁあっ
テンパってる人はおいといてですね(同一人物)
今回もまたたいしたオチがないっていう。
厳しい状況です。
しかも内容なにがなんだかわからんし。
いいんです!((断言
これは伏線なんです!((暴露
後からわかります!((企業秘密
必要以上にあとがきが長くなりました。
これ以上長くならないうちに、さらばです。
05月26日 桃