不出来の芸術

鳥の上で崩れ落ちたデイダラの姿を見て、サソリは舌打ちをした。
主を失い、急降下していく鳥型の造形にロープつきのクナイをなげつけ、地上へと引き寄せる。
ふと周りを見ると、数匹の大蛇たちは消えていた。
半分以上を破壊された暁のアジトを残して。

「やれやれ……」

気を失っているデイダラを地面に捨て置いて、サソリはため息をついた。

「任務失敗かよ……」




「おい、起きろ」

不機嫌そうな声で、オイラは目を覚ました。
赤い瞳が覗き込んでくる。

一瞬かと思ったが、違った。
の瞳はもう少し明るめの『赫』だ。

「悪ィが、オレはお前を運んでやる気はねェからな」

「…………」

状況がつかめず、オイラは目を瞬かせた。

「……ッ!! はッ!?」

それだけが、頭に浮かんできた。
サソリの旦那はフンと軽く鼻を鳴らした。

「行ったよ。大蛇丸に連れられてな。……だが、無事だ」

「……そう、だったな……うん」

右手を強く握った。
左手で粘土を掴んで、立ち上がる。
不思議そうに旦那が聞いてきた。

「どこへ行く気だ??」

「どこって…」

決まってるだろ。

を助けに行くんだよ。……うん」

「やめとけ」

旦那のその言葉に、、オイラは動きを止めた。
信じられねぇ、と旦那を睨むが、旦那は淡々と続ける。

「お前が今行ったところで、大蛇丸に勝てやしねぇ。
……まぁ、イタチと組んだら話は別だがな」

オイラがそれをしないと知っていて、わざと言ってるんじゃねぇか、こいつ……うん??

「バカにしてんのか……うん??」

「別に、そんなつもりはねぇさ。今行ったところで無駄死にするだけだって言いてェだけだ」

そんな風に繕われても、オイラの怒りはおさまらなかった。
旦那を睨み付けて、怒鳴る。

「だったらこのままを見捨てろって言うのかよ、うんッ!?」

「違う」

旦那は、ヒルコの目を通してオイラを見据えた。
いつも見ているはずなのに、なぜか体が動かなくなる。

が……。もしお前が、を助けに行って死んだら、は喜ぶと思うか??」

その言葉が、やけに心に響いた。
黙り込むオイラから視線を離し、旦那は歩き出す。

「いいか、覚えとけ。がいなくなったら寂しく感じるのは、お前だけじゃねぇ。
自分一人が被害者みてーな顔してんじゃねェぞ」

オイラも、旦那に向かって歩き出した。
その背中に声をかける。

「大蛇丸は、オイラが殺すぞ……うん」

旦那が足を止めた。
ゆっくりとこちらを振り向いてくる。

「今より、強くなりゃいいんだろ??……うん」

ヒルコの中で、旦那が薄く笑った気がした。

「……勝手にしろ」



手に残るものは、彼女が作った遠視鏡。
――でも、それ以外のものも、オイラはたくさんもらっているから。






気を失っていたらしい。
あたしはゆっくりと体を起こした。
落ちたときにぶつけていたらしく、左手に包帯が巻かれて、固定されていた。
もちろん、痛みなど微塵も感じないけど。

「目が覚めたかい??」

同じ部屋に人がいたなんて思いもしなかったので、あたしはビクリと肩を震わせた。

……だね??」

「……うん。そうだけど??」

挑むように相手を見据える。

大丈夫、こいつは大蛇丸じゃない。

灰色っぽい髪をした相手は、眼鏡を軽く押し上げながら言った。

「キミに、頼みたいことがあるんだよ」

「………」

そんなの、聞かなくても分かっている。
返事をするのも面倒だったので、だまったまま先を促す。

「キミの持つ、痛みを移す能力で、ここにいる人々の苦しみを取り除いてほしいんだ」

大蛇丸様とか、実験体とかの、ね。と彼は笑う。

その冷たい笑みに思わず背筋が凍り付く。
『苦しみを取り除いてほしい』なんて、善人らしいことを言っているけど、違う。

こいつは、『いたい』と騒がれるのが嫌なだけだ。

「従ってくれるだろう??」

そうは言うけど、これは命令だ。
逆らうことなど、許されない。

でも、あたしはあえて反抗した。
こいつらに完全に服従する気なんて、さらさらないから。

「条件つきでいいなら、いいよ」

「………??」

相手が少し驚いた顔をしたとき、もう一人誰かが部屋に入ってきた。
その人がまとうオーラを感じて、あたしは悟る。

大蛇丸、だ。

「条件って、何かしら??」

うっすらと笑って、大蛇丸が聞いてきた。
その目線に屈しないよう、あたしは胸元のペンダントをしっかりと握った。

よかった、落としてなかったんだ。

「あたしに、忍術を教えて」

「………」

少し面食らった顔をしたあと、大蛇丸は頷いた。

いつか必ず、デイはあたしを助けにやってくる。
そのときに足手まといにならないよう、今のうちから強くなっておくんだ。

いつか、二人で暁の仕事をこなせるくらい、強くなってやる。



手に残るものは、彼のくれたペンダント。
――でも、それ以外のものも、あたしはたくさんもらっているから。



不出来の芸術
 6

Next


あとがき
なんか尻切れトンボですんません
これからしばらく、デイはでません
んでもってサスケも多分でません
カカシなんて影もみえません
夢小説じゃねぇじゃん、とお思いでしょうが
暖かく見守ってください